何年か前の年末、いつもは手をつけない押入れの大掃除をした母が、
「こんなの出てきたのよ」って防災用リュックを持ってきた。
母自身もいつ用意したものだか忘れているくらいの代物だそうで、
何が入っているのか全然わからなかったらしい。
非常用として封筒に入れてあったお金(なんと10万円分!)は、
まだお札が聖徳太子と伊藤博文だったし、缶詰類もところどころサビていた。
「でね、これみて!」って母が笑いながら差し出した白い布は、
動物かなにかのバックプリントの入った児童用のパンツだった。
私はもう20代半ばだったのに。
ひとしきり笑った後部屋に帰ってから、何かホロリとした。
15年以上放置されていたそのリュックから出てきた、
乾パンの缶詰のサビがうつったパンツを見て、親の愛を感じた。